概要 | 代数曲面上の安定層のモジュライ空間の研究において、Fourier-Mukai変換の下でGie
seker安定性が保たれるかという問題は重要であり、変換の導入以来さまざまな条件
の下で調べられてきた。
2000年代にはBridgelandにより安定性の概念が導入されたが、上記の問題はこのBrid
geland安定性で考えた方がより良く扱える事が分かりつつある。Fourier-Mukai変換
は連接層のなす導来圏上で定義されるものなので、三角圏上の概念であるBridgeland
安定性の方を扱った方が自然なのは明らかである。
Bridgeland安定性条件の空間にはwall-chamber構造がある。代数曲面上の連接層の導
来圏に関しては安定性条件が具体的に構成されており、wall-chamber構造を詳しく調
べることができる。
今回の講演では、アーベル曲面の場合に話題を絞ってBridgeland安定性条件の空間の
構造の説明をする。特に「性質の良い」壁というものを導入し、それに関する壁越え
現象が半等質層を用いた安定層のモジュライ空間の具体的な記述と密接に関係するこ
とを解説したい。
講演内容は神戸大学の南出・吉岡両氏との共同研究(arXiv:1106.5217, 1111.6187)
及び吉岡氏との共同研究(arXiv: arXiv:0906.4603, 1203.0884)に基づく。
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