概要 | 干渉ブラウン運動とは、Euclid空間を互いに相互作用しながら運動する無
限個のブラウン運動粒子からなる確率力学系である。1970年代後半にLangによ
り、コンパクトサポートかつ滑らかなRuelleクラスの干渉ポテンシャルに対し
て、確率微分方程式の手法(Ito's scheme)による構成で研究の口火が切られ
た。その後、80年代前半にFritzにより、4次元以下の空間では非平衡解の構成が
行われた。しかし、無限個の粒子が集中する可能性を排除しつつ逐次近似を行わ
なければならないため、これらの、古典的手法の無限次元SDEへの直接な適用で
は、計算が難しく、また結果もきわめて限定的であった。
この講演では、無限次元SDEに対する「flow solution」の概念を導入する。そ
の応用として、干渉ブラウン運動を記述する無限次元SDEの、強解の一意的存在
を示す。この結果は、確率幾何を用いて確率力学の結果を導くもので、(自明な
制約を除く)すべてのRuelleクラスポテンシャル、および、上述の確率幾何条件
をみたすCoulombポテンシャルに適用できる。とくに、Airy点過程を代表例とす
るランダム行列に関連する無限点過程に付随する、無限次元SDEの強解の一意的
存在を産み出す。 |