概要 | 1階双曲型PDEに粘性項を付し粘性係数を0にする極限によって、双曲型
PDEの解を放物型PDEの解で近似できる。粘性項をブラウン運動で特徴づけること
によって、この極限を大数の法則に基づいて確率論的に論ずる方法は知られてい
る。本講演では、これに類似した考え方が1階双曲型PDEの差分近似でも可能で
あることを報告する。1階双曲型PDEの差分化方程式は、粘性項に対応する項を
付けなくても、ある種の拡散効果を有する。これをあるランダムウォークで特徴
付け、双曲型スケーリング極限を取ることによって、差分近似の収束を大数の法
則に基づいて論ずる。この考え方を一般的な非線形双曲型保存則方程式の差分近
似に適用し、従来の方法では困難であった時間大域的な安定性/漸近挙動/収束証
明/誤差評価/特性曲線の近似などを示す。この方法では、PDEの解だけでなく、
これに付随した特性曲線の近似も可能なため、両者の関係を論ずる力学系理論
(弱KAM理論)への応用価値がある。時間が許せばこの点についても触れたい。 |