概要 | 平面の中の無限個の粒子が2次元クーロンポテンシャル(対数関数)で
相互作用するシステムを考える。
このようなシステムを記述する確率測度の存在は非自明で、特別な
ポテンシャルの強さ(β=2)の場合だけが構成されている。この測度は、
非エルミート・ガウシアンランダム行列の固有値の分布の熱力学極限、
つまりGinibre ensembleの極限なので、ここではGinibre random point fieldと呼ぶ。
尚、直線上の対応物はDyson's モデルとよばれガウシアンランダム行列
(GOE, GUE, GSE)の固有値の熱力学極限である。
従来考察されてきたのは、Lebesgue測度を密度とするPoissonランダム測度や、
Ruelleクラスの干渉ポテンシャルをもつGibbs測度であった。
Poissonランダム測度は理想気体を表現する、
無限粒子系の空間のLebesgue測度の役割を果たすものであり、
Gibbs測度はそれに近いクラスである。
ここで、Gibbs測度とは、与えられた干渉ポテンシャルをもつ無限粒子系を
記述する測度を、その条件付き確率が満たすべき方程式
(Dobrushin-Lanford-Ruelle方程式)で記述するものだが、その構成は、
70年前後にRuelleクラスポテンシャルという超安定性と、正則性と呼ばれる
遠方での可積分性のもとで確立した。しかし、クーロンポテンシャルは遠方で
非可積分のため、この標準的なクラスから除外されていた。
この講演では、いかに無限クーロン系(Ginibre random point field)が、
Gibbs測度と異なる世界を形成するか、確率幾何および確率力学の視点から論じる。
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