概要 | 近年、様々な分野において自己組織化現象に関する研究が行われている。
自己組織化現象とは分子や細胞といった
サイズの小さい個々の要素が相互作用することによって自発的に
空間スケールの大きいパターンを生成する現象のことである。
反応拡散系はそのような自己組織化現象を記述する方程式の一つである。
反応拡散系で見られるパターンは美しく、ダイナミックでありそれ自体
魅力的な現象であるが、最近では生命現象における機能との
関わりにおいて重要な役割をしていることが生物実験で
明らかになりつつある。
その一つとして真正粘菌にみられる環境適応性に関する実験がある。
真正粘菌では細胞先端部で起きる化学反応と細胞内を流れる原形質との
相互作用を適切に行うことによって、外部の環境変化に
適応していることが実験的に報告されている。その機能を理解するためには
反応拡散系と流体現象の適切な
相互作用のルールを解き明かす必要がある。
本講演においては、真正粘菌の環境適応性を理解する上で
重要な、反応拡散系にみられるパルスダイナミクスに対する解析手法に
ついて解説する。また、
真正粘菌の数理モデルの構築を行い、反応拡散系と流体現象
の適切な相互作用について議論する予定である。
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