概要 | マルチボディシステムのような多数の剛体や質点が非ホロノミック拘束等の複雑な拘束条件のもとで接続された力学系は,内部接続系(interconnected system)と呼ばれ,その数学モデルは,陰的な非線形微分代数方程式群となることが知られている.このような内部接続系の典型的な例として,電気回路の分野では,古くから,構成要素間の関係をマルチポートとして捉えるネットワークシステムが良く知られている.しかし,相空間上のシンプレクティック幾何を基礎とする,いわゆるラグランジュ系やハミルトン系による従来の古典力学の理論では,どのように非ホロノミック拘束やラグランジアンの退化性による拘束を組み込み,陰的な力学系として定式化できるかは十分に明らかにされていなかった.最近,このような内部接続系に対して,シンプレクティック構造やポアソン構造を一般化したディラック幾何によって,陰的なラグランンジュ系による枠組みが有効であることが分かってきた.本講演では,内部接続系をネットワーク構造として理解するために,非ホロノミック拘束から誘導されるディラック構造について述べ,その上で,陰的なラグランジュ系(ラグランジュ・ディラック系)として定式化できることを解説する.また,ハミルトン・ポントリヤーギン原理と呼ばれる変分原理とラグランジュ・ディラック系の関係について述べる.さらに,異なるラグランジュ・ディラック系が与えられた場合の内部接続の方法について述べ,例として,簡単な非ホロノミック系や電気回路系を示す.最後に,今後の課題や発展の可能性および大規模非線形力学系の数値解析への応用について述べる. |