概要 | 負曲率多様体上の古典自由粒子の運動をあらわす測地流はアノソフ流
であり,カオス的な力学系の典型例としてよく知られている.半古典
ゼータ関数(Gutzwiller-Vorosゼータ関数)はその周期軌道につい
ての無限積(オイラー積)として定義される古典力学的な対象である
が,量子カオスの半古典論によれば,多様体上のラプラス作用素の固
有値は(絶対値が大きくなる極限において)半古典ゼータ関数の零点
と関係づけられることが期待されている.実際,定曲率の場合は半古
典ゼータ関数はセルバーグゼータ関数と一致し,このことはセルバー
グの有名な結果として知られている.しかし,定曲率でない場合には
半古典ゼータ関数について知られていることは多くない.この講演で
は力学系・エルゴード理論の立場から,転移作用素のスペクトルを分
析することで,半古典ゼータ関数にどこまで迫れるかということにつ
いて述べたい.
|