概要 | 本研究ではフーリエ向井変換を用いて, アーベル曲面上の安定層のモジュライ空間の構造を調べる.
アーベル曲面上には半等質ベクトル束と呼ばれる安定層があり, そのコホモロジー的性質や分類が完全に知られている. 特にフーリエ変換の下での振舞いが統制できる.
アーベル曲面上の一般の安定層を半等質ベクトル束の間の準同型の核または余核として表示することを考える. 曲面のピカール数が1の時, このような表示の存在が安定層のチャーン指標のみを用いて判定できる.
また安定層のフーリエ変換における振舞いの記述において, 算術群や整数係数2次形式が重要な役割を果たすことも分かる. この事と先に述べた表示の存在から, 安定層のモジュライとアーベル曲面上の点のヒルベルトスキームとの間の双有理変換が構成できる.
以上の結果は吉岡康太(神戸大理)との共同研究に基づくものです. この研究の発端は, 向井茂先生が1980年前後 (フーリエ向井変換の理論を作られた頃) に考察し, いくつかの講演記録に書き残された主張や予想の解読・解決にあります. |