概要 | 本講演では,特異性が悪いと(偏極)多様体がGITの意味で不安定になるという現象に着目する.1次元の場合は,(半)安定な対象は高々通常二重点までしか持たず,それらによって有名な曲線のモジュライのDeligne-Mumfordコンパクト化が構成されたのであった.我々はこの高次元化として「GIT半安定ならば高々半対数的標準特異点しかもたない」という予想を立て,この部分的解決をする.
そのために,偏極多様体(とある種のイデアルの組)の不変量である「S係数」という不変量を導入する.あるイデアルに関してS係数が負であると,偏極多様体は不安定となり,これを用いて任意次元での応用を与える.S係数は二つの起源を持ち,Donal dson-二木不変量のなすある多項式列の最高次係数であると同時に,Shah(1981)が局所環レベルで導入したある不変量の拡張でもある.更に,これはMMPの発展に即して導入された特異性の食い違い係数と直接的に関連する.
主応用としては,先にのべた予想を正規Q-Gorensteinの場合に,対数的標準モデルの存在を仮定した上で解決する.余裕があれば,安定性やモジュライに関する他の関連する結果も幾らか紹介したい. |