概要 | 1変数Hecke固有尖点形式$f$に対して,をモジュラー群(Siegelモジュラー群,Hermiteモジュラー群等)に関する重さ$l$の尖点形式の空間へのリフトとする.ここで, 「リフト」というのはにおけるHecke固有形式で,そのあるL関数が$f$のあるL関数(例えば)を用いて表されるものとする.このとき,次の問題を考える:
問題A. との周期(Petersson内積)の何乗かの比をの数論的不変量(例えばのL-関数の特殊値)を用いて表せ.
この問題は保型形式論にとってきわめて興味深く重要な問題でこれまでにも多くの研究がなされている.
問題Aが肯定的に解決したとき,その数論不変量を適切な方法で正規化するとその値が代数的数となることがしばしば見られる.
さて,2つの性質の異なる2つのHecke固有形式の対応する固有値の間にはある素イデアルを法として合同関係があることがしばしば見られる.このような素イデアルを合同を与える素イデアルという. このとき,いくつかの状況証拠を踏まえて次の問題を提出した:
問題B. とのHecke固有形式でリフトから来ないものとの間の合同を与える素イデアルを問題Aの数論的不変量に現れる素イデアルで特徴づけよ.
本講演者は数年前に,Duke-Imamoglu-Ikedaリフトと呼ばれるSiegelモジュラー形式へのリフトに関して問題Aを解決し(河村尚明氏との共同研究),それにより問題Bを解決した.本講演では,その後の進展や関連する話題(N. Dummigan氏,伊吹山知義氏,C. Poor氏, D. S. Yuen氏との共同研究を含む)について述べる. |